法人化のメリット~役員報酬について~

法人化のメリットについてはこちらの記事でまとめています。
法人化するメリット9つまとめ!

今回の記事ではその中でも特に、「法人化して役員報酬を出すことのメリット」についてです。

個人事業主が法人化して役員報酬を出すと、節税になるって、なんとなく聞いたことがある方も多いと思います。一体どうしてなのでしょうか?詳しく解説していきます!

 

1.個人事業主の場合の税金

個人事業主には所得税がかかります。

所得税法においては、事業主自身への給与は費用になりません。事業と事業主は一心同体であり、事業主に給与を払うという概念自体がないと言えます。仮に事業主自身に給与を支給しても費用にはなりません。事業から生じた利益はすべて事業主のものと考え、全体に対して所得税がかかります。

POINT:個人事業主は、自分への給与は費用にならない

    (自分に給与を払う概念自体がない)

所得税は、収益(売上)から費用を引き、そこから各種控除を引いた額に対して、所得税率を掛けて計算します。この費用には自分への給与は含まれません。

個人事業主の場合:(収益-費用-各種控除)× 所得税率=所得税

個人事業主は収益(売上)(仮に3,000万円とします)をあげるためには、商品を仕入れたり、宣伝をしたり、お店を借りたりと、様々な費用(仮に2,200万円とします)が発生します。この収益(売上)と費用の差額800万円が利益です。およそこの800万円に対して税率をかけることで税金を計算します。(実際には個人の状況により、いくつかの控除を引いた後の金額に税率をかけます)

(収益3,000万円-費用2,200万円)=利益800万円

(800万円-各種控除)× 所得税率23%-控除額63.6万円=所得税

 

※※※ 補足 ※※※

上の計算式の「控除額63.6万円」の部分をみておやっ?と思った方のために補足です。

所得税は所得が多くなるほど税率が上がる仕組みになっています(累進課税制度:るいしんかぜいせいど)

所得税率は平成30年8月現在、下表のとおり5%~45%となっています。

課税される所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円を超え 330万円以下 10% 9.75万円
330万円を超え 695万円以下 20% 42.75万円
695万円を超え 900万円以下 23% 63.6万円
900万円を超え 1,800万円以下 33% 153.6万円
1,800万円を超え4,000万円以下 40% 279.6万円
4,000万円超 45% 479.6万円

この右端の「控除額」という欄についてです。195万円を超えたから全部の税率が10%になるということではなく、195万円を超えた部分についてのみ10%税金がかかるという意味です。

例えば、所得が200万円の人なら表の税率は10%、普通に計算すると200万円×10%=20万円です。195万円の人が払う税金は195万円×5%=9.75万円なのに、所得5万円の差に対していきなり税額に差が出すぎてしまいます。そうならないために、この「控除額」が設けられています。

所得200万円の人の税額は、200万円×10%-9.75万円=10.25万円と計算します。

所得200万円の場合、195万円を超えた5万円部分についてのみ税率20%で、195万円部分については10%です。

表の見方:超えた部分に対して、それぞれの税率がかかる

    ⇒控除額はその調整のための額

 

2.法人から役員報酬を支給する場合の税金

法人化した場合は、事業主は通常法人の役員となり、法人から役員報酬を受け取ります。法人から支給するその役員報酬は税務上の決まりを守ることで、法人の費用になります。よって、法人において役員報酬分だけ利益が少なくなります。

法人化した場合の法人税:

(収益-費用-役員報酬)× 法人税率 = 税金

仮に役員報酬を500万円とすると、売上3,000万円から費用2,200万円を引いた800万円から、さらに役員報酬500万円を引いた(3,000万円-2,200万円-500万円)=300万円に対して法人税がかかります。

法人化した場合の法人税:

(3,000万円-2,200万円-500万円=300万円)× 法人税率 = 税金

また、法人から支給される役員報酬は、その役員個人において所得税が課されますが、個人事業主の場合と異なり、役員報酬の額面金額にそのままに税率がかかるわけではありません。額面金額から「給与所得控除」と呼ばれる金額を引いた額に対して税率がかかります。給与所得控除の金額は、額面金額に応じて定められています。

役員報酬についてかかる所得税:

(役員報酬-給与所得控除-各種控除)× 所得税率 = 税金

給与所得控除とはサラリーマンにおける費用見合いのような位置づけです。実際にかかった額を集計するのは手間がかかるので、一律で見合額が定められています。500万円に対する給与所得控除は154万円と決まっており、(500万円-154万円)=346万円に対して税金がかかります。

役員報酬についてかかる所得税:

(500万円-154万円-各種控除)× 所得税率 = 税金

このように、法人から役員報酬を支給すると、法人においてはその役員報酬が費用として認められ、個人においては「給与所得控除」という費用見合を引いた額に税率がかかることになり、費用を2回引けるような形になります。結果として、給与所得控除の金額だけ所得を圧縮することができます。

 

これまでの例をまとめると以下のとおりです。(簡略化しています)

個人事業主の場合

(収益-費用)× 所得税率=税金

(3,000万円-2,200万円=800万円)× 所得税率23%-63.6万円=所得税

800万円について所得税がかかる

 

法人化した場合

法人にて:

(収益-費用-役員報酬)*法人税率=税金

(3,000万円-2,200万円-500万円=300万円)× 法人税率約22%=税金

300万円について法人税がかかる

 

役員個人にて:

(役員報酬-給与所得控除)× 所得税率=税金

(500万円-154万円=346万円)× 所得税率20%-42.75万円=税金

346万円について所得税がかかる

個人事業主の場合、800万円について所得税がかかるのに対して、法人化した場合は法人にて300万円、役員報酬について346万円の合計646万円について税金がかかります。給与所得控除154万円の分だけ所得を圧縮できているのがわかると思います。

また、法人と個人とで所得を分けることで、税率を低く抑える効果があります。

POINT:

①役員報酬には給与所得控除があるため所得を圧縮できる

②個人と法人に所得を分けることで、税率を抑えられる

 

3.節税のキモは、サラリーマンの費用見合い?

役員報酬の節税のキモとなっている、給与所得控除。サラリーマンの費用見合いと上で説明しましたが、一体なんでしょう?

所得税の世界では収入を10種類に区別しており、サラリーマンなど勤務先から受ける給与や賞与などの所得を「給与所得」と呼びます。サラリーマンと書くと少しイメージが違うと思いますが、役員報酬も会社から受ける給与ですので、この「給与所得」に該当します。個人事業主の所得は、会社から受ける給与、ではないですよね?ですので違う種類の所得です。給与所得ではなく、「事業所得」と呼びます。

POINT:所得には種類がある

    サラリーマン ⇒ 給与所得 …役員報酬もこれに該当!

    個人事業主 ⇒ 事業所得

給与所得の金額は、次のように計算します。

サラリーマンの場合:

給与所得の金額= 収入金額(源泉徴収前)-給与所得控除

 所得税 =(給与所得の金額-各種控除) × 所得税率

個人事業主は給与所得ではありませんので、これとは異なる方法で計算していましたよね?(…覚えていますか?)個人事業主の収入は所得税の世界では「事業所得」と呼びます。事業所得は、収入から費用を引いた金額について税金がかかるのでした。

個人事業主の場合:

事業所得の金額= 収益 - 費用 

 所得税 =(事業所得の金額-各種控除)× 所得税率

サラリーマンなどの給与所得者においても、仕事のために自腹で筆記用具や会社の制服を用意したり、交通費を負担したりということもあるでしょう。給与所得控除というのは、こうした事情を考慮して設けられています。

個人事業主のときのように、実際にかかった金額を収入金額から引く計算をしません。給与の金額に応じて発生したと「みなされる」費用を一定の算式により自動的に計算することになっています。サラリーマンは以前よりも増えていますし、一人一人の費用を確認するとなると税務署の労力の問題もあり、難しいのが現状です。そこで、「給与所得控除」という一律の基準を設け、個別判断をしなくてすむようにしています。

経費見合として給与収入に応じた一定額を差し引くことで、個人事業主とサラリーマンなどの給与所得者との公平性を保っています。

 

4.給与所得控除の金額と利益圧縮シミュレーション

給与所得控除の金額は下表のとおりで、65万円~220万円までの間で給与額に10%~40%の割合を掛けることで段階的に大きくなるよう決められています。

給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額
1,800,000円以下 収入金額×40%
650,000円に満たない場合には650,000円
1,800,000円超 3,600,000円以下 収入金額×30%+180,000円
3,600,000円超 6,600,000円以下 収入金額×20%+540,000円
6,600,000円超 10,000,000円以下 収入金額×10%+1,200,000円
10,000,000円超 2,200,000円(上限)

給与所得控除(65~220万円)=収入金額*定められた割合(40~10%)+一定額

具体的に、役員報酬300万円、500万円、1,200万円のケースでそれぞれ給与所得控除を計算すると以下のとおりになります。

役員報酬300万円の場合
給与所得控除額 収入金額300万円×30%+18万円=108万円
給与所得の額 300万円-108万円=192万円 ⇒108万円圧縮

 

役員報酬500万円の場合
給与所得控除額 収入金額500万円×20%+54万円=154万円
給与所得の額 500万円-154万円=346万円 ⇒154万円圧縮

 

役員報酬1,200万円の場合
給与所得控除額 220万円(上限)
給与所得の額 1,200万円-220万円=980万円 ⇒220万円圧縮

 

5.役員報酬が法人の費用になる条件

役員報酬は法人が支給した金額のすべてを無条件に損金算入することはできません。

これは、従業員と異なり、役員が自らの報酬・賞与を決定することができるため、すべてを損金算入できるとすると、利益調整が可能となってしまうためです。

法人から支給するその役員報酬は税務上の決まりを守ることで、法人の費用になります。その税務上の決まりとは、以下の3つの支払い方法に該当する場合です。

 

・定期同額給与

・事前確定届出給与

・利益連動給与

 

このうち「事前確定届出給与」「利益連動給与」は条件が厳しく、導入するのは簡単ではないでしょう。このため、1か月、あるいは数か月に分けて一定金額ずつ支払う「定額同時給付」の採用を検討することが一般的です。

 

6.定期同額給与の仕組み

役員報酬が定期同額給与とみなされるのは、以下の条件を満たす場合となります。

定期同額給与の条件

条件1:支給時期が1か月以下で一定の期間になっていること

条件2:その事業年度の間、毎回同額が支払われること

1年間同額の月給が支払われることで、定期同額給与となります。

正当な理由なく金額を変更すると、変更前後を比較して低い方の給与までしか費用として認められなくなります。月30万から50万に引き上げても、月50万から30万に引き下げても、月30万円までしか費用にできません。

法人の費用として認められる役員報酬の金額が小さくなれば、法人において本来の利益より大きな金額を基準に税金が計算され、余計な税金を払うことになってしまいます。

期の途中で役員報酬額を変更するには厳しい条件が定められているため、あらかじめ見込まれる利益に合わせて、適切な役員報酬を支給するのが重要になります。

7.まとめ

いかがでしたでしょうか?

法人化のメリットの1つ、役員報酬が出せることについて詳しく解説しました。
そのメリットは、役員報酬には給与所得控除があり、その金額分だけ合計の所得を圧縮できること、所得を法人と個人(役員報酬)に分けられ税率が抑えられること、の2つでした。

まとめ:

①役員報酬には給与所得控除があるため所得を圧縮できる

②個人と法人に所得を分けることで、税率を抑えられる